イスラム国問題でシリア渡航禁止命令が行われた本当の理由
2015/11/18
旅券返納しなければ逮捕!?何とも物騒な。しかしそれには政府の思惑が・・・。
騒動はフリーカメラマンの杉本祐一さんがシリア入りを計画している時に起きた。ある日、外務省職員と警察官が杉本さんを訪ね「旅券の返納に応じなければ逮捕する」と返納を求めた。確かに危険区域の立ち入りは政府が指導する必要があるとは思うが、「渡航の自由」は憲法によって保障されている。それなのに逮捕とは物騒な話だ。世論でも色々と騒がれている。
そもそも、危険区域への渡航が禁止されたら一体誰が悲惨な戦争やテロを取材するのだろうか?報道がされるということは誰かが危険を犯して現地に足を運び取材をしているのだ。もし世界各国で渡航が禁止されれば、イスラム国(ISIS、ISIL)がやっているようにテロリスト側が発信する情報でしか事態を知ることが出来なくなってしまう。これは非常に危険なことだ。何故なら情報の発信源がテロリスト側からしかないのであれば、情報の全てをテロリストがコントロール出来てしまうからだ。
渡航禁止命令について最初は政府が”きちんと仕事してます”アピールをしているのだと思っていたのだが、とある記事を読んで裏があること思い始めた。その記事がこれだ。大変価値のある記事なので是非読んでみてほしい。
ヨルダン現地取材で見た人質事件 by 三浦英之・朝日特派員、新聞では読めない迫力リポート
ヨルダンに訪れた朝日新聞特派員によるルポなのだが、日本のメディアでは大々的に報じられることが無いことが語られている。その中でも印象的だったのがこれだ。
㉑その夕、大使館前でヨルダン市民による後藤さんの追悼集会が開かれた。現場で取材したが、日本を思うヨルダン市民の気持ちは間違いではないものの、あの演出は過剰だと感じた。参加者の多くが政府系組織の要請できていることを半ば認めた pic.twitter.com/0oYyG7X4BO
— 三浦英之(朝日新聞アフリカ特派員) (@miura_hideyuki) 2015, 2月 9
㉔多くが政府を非難していた。一触即発の状態になったとき、死刑囚の死刑執行の情報が流れた。すると人々は一気に沈静化し、死刑執行と復讐、政府を支持する掛け声だけが延々と続いた。私は恐ろしくなった。政府による情報操作。コントロールされている pic.twitter.com/w9fznchagQ
— 三浦英之(朝日新聞アフリカ特派員) (@miura_hideyuki) 2015, 2月 9
このルポでは日本のメディアでも報道された後藤さんの追悼集会が実は『政府の要請』によって人が集められたことが明らかにされ、ヨルダン軍パイロット殺害後は多くの政府批判が死刑囚の死刑執行と共に支持する声に変わったそうだ。これらはヨルダン政府による、テロへの報復を国民に支持させる為の『世論誘導』だろう。
これと同じことが日本でも起きている。今回の渡航禁止命令だ。自由にシリアに渡航できれば政府にとって不都合な情報を入手することが出来てしまうわけだ。不都合な情報とは報復や空爆に反対する世論のことだ。安倍政権はアメリカと密接な関係であるわけだからアメリカの意向に沿いたいわけだ。戦争をビジネスにしているアメリカにとっては「空爆なんて止めろ」という声が強まればそれは痛手なのである。
だから「日本人を守る」というのは建前であって、本当の目的は「政府にとって都合の悪い情報の入手を避けること」なのだと私は推測する。大体、イスラエル国旗の前で演説したり、人質が拘束されている時に「テロに屈しない」とテロリストを挑発したりする政府が「日本人を守る」という理由で渡航禁止命令を出すとは思えない。
先日には「経済被害でも集団的自衛権行使」という無茶苦茶な発案がされたこともあり、今回のイスラム国日本人人質事件を利用する形で、安倍首相は日本の軍国化に歩みを進めているように感じる。そして、政府批判が許されないような風潮になってきていることは民主主義国家としては大きな問題だ。だからこそ政府が語りたがらない情報を入手することができるジャーナリストの存在は重要なのだ。とはいえ、それが国民の命を脅かすことになってはいけない。細心の注意を払って行動してもらいたい。