佐野氏デザイン五輪エンブレム『原案』がヤン・チヒョルト展ロゴの盗用ではない理由を論理的に解説
2015/11/05
見た目の類似性で言えばリエージュ劇場ロゴよりも似てます。パーツの形状や大まかな位置も同じです。これは普通ならパクリだと思われても仕方が無いと思います。「決定版は盗用で無い!」と散々擁護してきた私も「これは流石に擁護できない」と思いましたからね。
しかし、似てるというだけで盗用としてしまうのは許せないので、盗用ではない理由を探しました。
で、色々考えた結果見つかりました。決定的とは言えないかも知れませんが高確率で盗用ではないと根拠を示すことできるかと思います。
根拠1:9分割のコンセプト
まず以下の画像をご覧ください。
決定版に存在した9分割の概念は原案から存在する事が分かります。
ヤン・チヒョルト展のロゴも中心部分の縦棒はグリッド内に収まっていますが、他のパーツはそのルールから外れているので、9分割のルールによってグリッド内に収まっているのではなく、単に正方形を三つ繋ぎ合わせて縦棒を作ったと見ることが出来ます。
一方で五輪エンブレム原案の方はきっちりグリッドに沿う形でデザインされています。このことから見た目は似ているけどデザインのコンセプト、ルールはそれぞれ異なる事がお分かりいただけたかと思います。
ただ、これだけではデザインの考え方が違うことを示しただけであり、見た目を真似ていないという根拠にはなりません。というわけで次は見た目を真似ていないという根拠を示します。
根拠2:見た目がこうなる理由
まず、以下の画像をご覧ください。
原案とそれを元に作ったパラリンピックエンブレムです。なお、パラリンピックエンブレムは公開されていないので、決定版と同じルール(白黒を反転させ2つの意味での平等を表現)で私が作りました。
個人的に原案は決定版に劣ると思いますが、1964エンブレムリスペクト要素を除いた基本コンセプトは踏襲されていると思われます。
- 『TOKYO』、『TEAM』、『TOMORROW』という3つの『T』
- パラリンピックエンブレムとの共通性
- 日本の伝統色である金、銀、赤を使用
- 赤い丸は一人ひとりのハートの鼓動を表す(だから心臓と同じ位置(左側)に配置)
- 黒は全ての色を混ぜることで生まれる色。転じてあらゆる人種が参加する五輪の多様性を表す
- 9分割することで様々な文字を生み出す事が可能
詳細はこちらで解説していますので宜しければご覧ください。
では今度は9分割の概念を利用して別パターンを作ってみます。
四角に置き換えたパターン
まずは三角部分を四角に置き換えたパターンです。
どうでしょうか?赤い丸を除けば全部が四角で構成されているので重たい感じがします。それに手抜きだと思われる可能性が高いですね。
さらに白黒反転してパラリンピックエンブレムにした場合、上2つのブロックが金と銀で塗り潰されてしまっているので、『=』を表す黒い部分が認識できなく(しにくく)なります。なのでボツですね。
三角の向きを変えたパターン
『T』の羽の部分の向きを変更したものです。
エリンギか携帯のアンテナマークにしか見えません。
丸に置き換えたパターン
三角部分を丸に置き換えたパターンです。
右下の赤い丸と同じ形状なので、どの部分を文字と見れば良いか分からなくなり、文字として認識できなくなります。パラリンピックエンブレムも同様で黒い下地に丸が配置されているだけにしか見えません。
全部丸にすると・・・
なんだかオセロがやりたくなりますね。
結果:消去法でこうならざるを得ない
9分割のグリッドに配置した場合、一番文字として認識でき、見た目のバランスも良く、『=』もきちんと認識できるのは、このパターンなんですよね。というか『=』の展開関係無しにこの案ですね。
つまり、ヤン・チヒョルト展のロゴを盗用せずとも9つのグリッド内で『T』を表現しようとすれば、おのずとこの形に辿り着いてしまうんですよね。誰がやっても同じ様な答えにたどり着くでしょう。
また、アルファベット展開を考えた場合、『T』から派生させていくのだとすると、『T』に三角を含めなければ成立しないわけです。
佐野氏がヤン・チヒョルト展に行っていたという事実
佐野氏の会社の公式ツイッターアカウントによるとヤン・チヒョルト展に行っていた事が明らかになっているので、「見たことが無い」という言い訳は通用しません。
しかし、ヤン・チヒョルト展の開催期間は2013年11月01日 ~ 2013年11月26日と1ヶ月弱と短いんですよね。しかも大々的に宣伝されていたわけでもないと思うので、見ていても数回程度でしょう。
たった数回見ただけのロゴを1年間も記憶しておくでしょうか? 自分ならたった数回見ただけのロゴの存在なんて数日で忘れますね。
もし、佐野氏がそのロゴを記憶していたとしても、9分割という概念が前提にある以上、先ほど説明した通りこういう形になってしまうのは必然なんです。
これが盗用していないと思う根拠です。というか、もし参考にしていたとしても、これだけプロセスやコンセプトが異なれば盗用とは言わないんですよね。『盗用』ではなく『参考』です。
原案は後から作られた?
噂レベルであり盗用とは無関係ですが、この原案が会見後に作られたのではないかという指摘があります。擁護していて言うのもあれですが、私は50%:50%くらいで疑っています。
その理由は、ただ事実を述べるだけでは盗用してないことを証明できないと思い、火消しの為に組織委が佐野氏に原案を作らせ事態の早期解決を図ったかも知れない、ということです。もしそうなら完全に裏目に出てしまいましたけどね。
しかし、どちらにしろこれまでの記事や今回の記事で説明してきたように、盗用ではないことはほぼ間違いないと思っています。