デザインの類似性はカレーとシチューに例えると分かりやすい!佐野研二郎が「エンブレムは全く似てない」と断言した理由
2015/11/05
エンブレム取り下げてもなおバッシングが続く佐野研二郎氏ですが、彼がバッシングされる理由の1つに『素人目に見て似てるデザインを似てないと断言してしまった』ということが挙げられます。多くの人は似てると思っている、しかし佐野氏は似てないと言った。それが何故だか分かりますか?
結論から言ってしまうと、「似てる」「似てない」は考え方の基準をどこに置くかの違いなんですよね。
多くの人が「見た目が似ているんだから制作工程が違っても似てるでしょ!往生際が悪い!」と佐野氏の発言・態度に苛立ちを覚えたはずです。これは似てる似てないの判断基準が「見た目」にあるからそう思ったわけです。
でも多くのデザイナーは苛立ちを覚えるどころか逆に「災難だな・・・」と擁護した人が大半だったわけです。これは判断基準が「見た目以外」にもあることを知っていて盗用ではない確信があったからこういう意見が多かったんです。
おそらく、多くの人にはデザインを見た目以外で判断するという感覚が身に付いていないと思います。でも、けっして難しいものではないんですよね。
デザインが分からない人でもデザイナーの考え方が簡単に分かる方法があります。それが、「カレー」と「シチュー」です。
カレーとシチューは似てると思いますか?
五輪エンブレムと同じ様に見た目がそっくりなカレーとシチューですが、あなたはこれらが似ていると思いますか?
おそらく、意見は大きく割れるでしょう。こんな感じで。
- 「見た目が似てるんだから似てる」
- 「味、匂い、発祥が違うんだから似てない」
- 「見た目は似てるけど全く異なる料理だ」
この違いは、最初に言った、考え方の基準をどこに置くかによって生まれるんです。見た目なのか?味なのか?それとも他の何かか?これらは、考え方の基準が異なるだけで、言ってることはどれも正しいんですよね。
デザインにも同じ事が言えます。
デザインには見た目以外の様々な要素が含まれている
カレーやシチューには「見た目」以外にも
- 味
- 匂い
- 材料
- 調理方法
- 発祥
というように様々な要素が存在します。
それと同じ様に佐野氏デザインの五輪エンブレムにも「見た目」以外の様々な要素が含まれています。
- 『TOKYO』、『TEAM』、『TOMORROW』という3つの『T』
- 東京五輪1964エンブレムのリスペクト
- パラリンピックロゴとの共通理念
- 日本の伝統色である金、銀、赤を使用
- 赤い丸は一人ひとりのハートの鼓動を表す(だから心臓と同じ位置(左側)に配置)
- 黒は全ての色を混ぜることで生まれる色。転じてあらゆる人種が参加する五輪の多様性を表す
- 9分割することで様々な文字を生み出す事が可能
エンブレムについての詳細は以下の記事をご覧ください。
やはり佐野研二郎は凄かった!五輪ロゴが盗用ではない明確な理由を簡潔に解説
佐野氏が「似てない」と言ったのは、デザインの一要素である「見た目」だけではなく、これら数々の要素を総合的に見て「似てない」と判断したわけなんですよね。佐野氏はこれを裏付ける発言を会見でしています。
要素は同じ物はあるんですけども、デザインに対する考え方が全く違うので、正直全く似てないと思いました
この発言の「要素は同じ物はある」という部分は「見た目」を指していて、その部分が似てることは認めているわけです。その上で、それ以外の要素は全く異なるから「似てない」と主張したということなんです。
おわりに
「佐野氏を擁護してばかりのデザイン業界は腐敗している」というように当事者の外にまで火の手が広まっているわけですが、『考え方の基準』が各々異なるからこういうことになってしまうんですよね。
こういったボタンの掛け違いによる衝突はデザイン業界に限らずあらゆるシチュエーションで起こり得る問題です。例えば安保法制にしかり、日韓関係にしかり。
考え方の基準が異なるのは知識量によって変わってくるので仕方の無いことだと思います。大切なのは、考え方の基準は人それぞれである事を認識しておく事だと思います。そうすれば余計なトラブルは極力回避できると思います。気を付けて行動していきたいですよね。